興奮毒性とは、グルタミン酸などの神経伝達物質による過剰な刺激によって神経細胞が損傷し、死滅する病理学的プロセスのことである。 これは、NMDA受容体やAMPA受容体といった興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体が、グルタミン酸作動性の嵐によって過剰に活性化されることで起こる。 これらの受容体の過剰刺激は、細胞内のカルシウム濃度の上昇、ミトコンドリアストレス、オートファジーの欠乏を引き起こし、最終的にグルタミン酸作動性ニューロンの死に至る。
興奮毒性は、脳卒中、外傷性脳損傷だけでなく、多発性硬化症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症などの神経変性疾患にも関与していると議論されている。
脳卒中や外傷性脳損傷では、グルタミン酸のような神経伝達物質の急激な急増が、細胞内へのカルシウムイオンの過剰流入を引き起こし、ミトコンドリア機能障害、リソソーム機能障害、アポトーシス、炎症プロセスなどを引き起こす。
さらに、興奮毒性は急性傷害で起こるだけでなく、神経変性疾患にも関与している可能性がある。 多発性硬化症では、免疫介在性の炎症と脱髄が中心的な発症プロセスであるが、興奮毒性が神経細胞障害を悪化させるという潜在的な役割が注目されている。 アルツハイマー病、ALS、パーキンソン病、ハンチントン病などの病態も、興奮毒性過程の関与が疑われている。
これらの疾患における興奮毒性の関与の程度はそれぞれ異なるが、中枢神経系内の神経伝達物質のバランスを調整することを目的とした治療介入戦略は、これらの疾患を患う患者に対する可能性のある治療法である。
SCANTOXでは、興奮毒性は、例えば、胚一次皮質ニューロンをグルタミン酸で処理し、生存率と細胞毒性を測定することで評価できる(図1)。 物質MK-801は、この病変を逆転させる参照化合物の役割を果たすことができる。
グルタミン酸病変は、SH-SY5Y、NSC-34、または人工多能性幹細胞(iPSC)に対して行うことができる。 そのため、細胞はグルタミン酸で24時間処理される。 グルタミン酸添加の濃度と時点は細胞の種類によって異なる。 グルタミン酸誘発毒性と細胞死は、LDHとMTTアッセイを用いて評価される。
図1:E18マウス胚由来の一次皮質ニューロンをDIV8まで培養し、その後L-グルタミン酸で24時間病変させた。 参照化合物であるMK-801は、L-グルタミン酸誘発毒性および細胞死をそれぞれLDHおよびMTTアッセイで評価した結果、回復させることができた(各群n=6)。 データは群平均で表示し、ビヒクル対照に対するパーセントで表した。 一元配置分散分析(One-way ANOVA)後、Dunnetのポストホックテストを 行った。 ***p<0.001。