ミクログリア細胞は神経炎症の中心的メディエーターであり、その活性化プロファイルを研究するためにはin vitroモデルが不可欠である。リポ多糖(LPS)はよく知られた強力なミクログリア活性化因子であり、その強力で一貫した作用から神経炎症研究に広く用いられている。それにもかかわらず、神経炎症という文脈では、LPSは部分的に非生理的な刺激となる。この問題に対処するため、LPSといくつかのサイトカインカクテルを比較し、in vitroでの複雑な炎症環境をよりよく模倣するために、神経炎症を誘発する効果を検証した。そこで本研究では、マウス(BV-2)およびヒト(HMC3)ミクログリア細胞株の異なる炎症性刺激に対する反応を比較した。細胞は、LPS、あるいはインターフェロンγ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン1-β(IL-1β)の組み合わせからなる5種類のサイトカインカクテルのいずれかで刺激され、刺激から24時間後に転写レベルおよびタンパク質レベルで炎症活性化が評価された。
ヒトHMC3細胞では、LPSおよび各種サイトカインカクテルがIL-1βおよびTNF-αのmRNA発現を有意に誘導するが、マウスBV-2細胞では、LPSがサイトカインカクテルに比べてIL-1βのmRNA発現をより高率に誘導する(図1)。
図1:ヒトミクログリアHMC3細胞またはマウスミクログリアBV-2細胞におけるサイトカインmRNA発現レベルに対する24時間のLPSまたはサイトカインカクテル処理の影響。 RT-qPCRで解析したHMC3細胞およびBV-2細胞におけるIL-1β(A、B)およびTNF-α(C、D)のmRNAレベル。各群n = 6。一元配置分散分析(One-way ANOVA)とダネットポストホックテスト(Dunnett`spost hoctest)の比較。p<0.05、***p<0.01、***p<0.001。
サイトカインの分泌レベルはヒトHMC3細胞とマウスBV-2細胞で異なる。例えば、LPSはマウスBV-2細胞でIL-6の分泌を強く誘導するが、ヒトHMC3細胞ではそれほど誘導しない。異なるサイトカインは、LPSか特定のサイトカインカクテルのどちらを刺激として用いるかによって、分泌レベルが異なる。IP-10分泌だけは、絶対値がかなり大きく異なるにもかかわらず、HMC3細胞とBV-2細胞の間で同様のパターンを示した(図2)。
図2:ヒトミクログリアHMC3細胞またはマウスミクログリアBV-2細胞におけるサイトカイン分泌に対する24時間のLPSまたはサイトカインカクテル処理の影響。 免疫吸着アッセイ(Mesoscale Discovery、MSD)により分析した、それぞれの細胞株におけるIL-6(A、B)、IL-8(C)、マウスホモログKC/GRO(D)、およびIP-10(E、F)の分泌レベル。平均値+SEM。各群n = 6。一元配置分散分析(One-way ANOVA)後、Dunnett`spost hoc検定、またはKruskal-Wallis検定後、Dunnの多重比較検定による対ビヒクルコントロール(VC)。p<0.05、***p<0.01、***p<0.001。
これらの知見は、適切な刺激選択の重要性を強調し、ミクログリアの活性化における種特異的な差異を浮き彫りにした。同様の研究は、初代ミクログリアや脳スライスでも行うことができる。
従って、ヒトやマウスのミクログリア細胞は、抗炎症化合物のハイスループットin vitro スクリーニングのための、非常にトランスレーショナルな神経炎症モデルである。
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